最終更新：Sep.04-2001＜ver.4.1＞
ハムフェア2001会場で見た新製品
2001年８月31日〜９月２日の３日間、神奈川県横浜市の「パシフィコ横浜」で年に一度のハムの祭典、「アマチュア無線フェスティバル(ハムフェア)」が開催されました。このコーナーでは会場を訪れた制作者が見た、おもに各メーカーの新製品、参考出品の情報をお知らせしましょう。
★アイコム今回のブース外観はここ
・毎年、ハムフェア会場で新製品の発表を行っているアイコムですが、今年はHF〜144MHz帯をカバーするオールバンド100W固定機、IC-7400を発表しました。(画像はこれ。会場で配布していたパンフレットはこれとこれ)。
サイズ(287W×122.5H×316Dmm)とパネルデザインは従来機･IC-746と同じですが、このボディ内にIC-756PROU同様の32ビット浮動小数点DSP&24ビットAD･DAコンバータを搭載することで、IF段でのDSP動作も実現。通過帯域幅の自由な設定やフィルターシェイプの選択もできるデジタルIFフィルタが魅力です。価格はIC-746よりも2万円高の218,000円で、９月末頃発売とのこと。ブース内には他社同型機との性能比較パネルも貼ってありました。
・さらにJAIA統一規格(D-STAR)に準拠した1200MHz帯デジタル変調トランシーバを参考出品。音声8kbps、データ128kbpsでの通信が可能であるほか、通常のFMアナログ変調での通信もできるそうです(価格、発売時期とも未定。そのままの形で発売するかどうかもわからない由)。会場内ではPCに接続してのインターネット接続実験も行っていました。
また同じ規格による1200MHz帯、10GHz帯のレピータシステムの試作品も展示していました。
・そのほかデジタルナロー通信トランシーバ(モービルタイプ)も参考出品。こちらは音声を2.4kbpsという超低速で送る技術を利用し、占有帯域幅をSSB並みに圧縮したところがミソ。音声を聴きましたが一般のFM通信とさほど変わりませんでした。これも発売時期、価格とも未定。技術の一端を披露したものと理解した方がよさそうです。
さらにはIC-910用のオプションとして「2400MHz帯受信コンバーター」も参考出品していたそうです(うーん、これは気付きませんでした。羽田空港のラウンジでこのページを見て、わざわざメールで教えてくださった関係者の方、ありがとうございます。hi)
・またアイコムのＨＦ機ユーザーのための組織「iUSE」の専用相談窓口を設けていました。他社にはこのようなコーナーがなかったので好印象。ただし質問は少な目で、担当者もちょっと手持ち無沙汰気味でしたけど!?
★スタンダード(八重洲無線/日本マランツ)今回のブース外観はここ
・今年５月にJAIAを脱退した八重洲無線(バーテックススタンダードに社名変更)と日本マランツですが、昨年同様に販社である株式会社スタンダードの出展という形式で、会場やや奥にブースを構えていました。
ここで参考出品されていたのは、FT-897という1.9〜430MHz帯のオールモードコンパクト機。サイズは200W×80H×230Dmmで、ポータブル機のFT-817と似たヘビーデューティなフィールドイメージに仕上げているのが印象的。HFと50MHz帯では100W、144MHz帯では50W、430MHz帯では20Wの送信出力で、コリンズのメカフィル(CW500Hz、SSB2.3KHz)やDSPによる混信除去機能を搭載しているそうです(画像はこれとこれです。どちらも暗めで申し訳ない!!)。
会場の説明パネルによると、その他の特徴としては、
・超小型ながら大型チューニングノブ、操作性を重視したパネルレイアウトで本格的HFベースステーションの操作感覚を実現。
・アウトドア運用に適した12VDC動作
・アルファーニューメリック表示(8文字まで)に対応した200chの大容量メモリー搭載
・視認性に優れた照明付き大型液晶ディスプレイ
・CTCSS、DCS機能を標準装備
・1200/9600bpsパケット通信対応、RTTY、PSK31などにも対応
・HF〜50MHz帯と144/430MHz帯の2つのアンテナ端子装備
・多彩なスキャンと、高速スキャンで信号のある周波数を自動的に記憶するスマートサーチ機能
・相手局(ARTS対応機を使用)の状態が自動的に把握できるARTS機能
・アクティブチューニングアンテナ･ATAS-100対応
・APO、TOT、ARS、CATコントロール、送受信ナローモード対応
−−この製品、まだモックアップを１台展示しているだけで、発売時期も価格も未定とのこと。スタッフからは「急遽ハムフェアでの展示が決定した製品なので詳細は不明。どう頑張っても今年中の発売はない」との説明がありました。また商品企画関係者からは「これから細部を詰めることになるので、FT-817の時よりも発売までの時間がかかりそう。価格はFT-847(206,000円)とFT-817(96,800円)の中間程度になると思う」との情報がありました。さらに広報担当者からは「もしこの製品が、電源(バッテリー)内蔵だったらどうする？」という、なんだか意味深な発言も!?
・ほかにはショー初登場となるVX-5MDのシルバーバージョンが目を引いていました。
・ところで、あまり知られていませんでしたが、スタンダードではハムフェア会場外に“特別の会場”を確保し、MARK-V FT-1000MPの受信体験会を開催し大盛況でした。公園内の喫茶コーナーの一部を借り切り、MARK-Vを２台設置。WDXCの専門係員がつきっきりで説明してくれ、サービスのアイスコーヒーを飲みながらじっくりと受信が楽しめます。Ｙ社のHF機を購入しWDXCに入会したメンバーにはDMで案内がありましたが、会場内での案内は張り紙１枚だけ。見逃すと損しますゾ!?(画像はこことここ)
★ケンウッド今回のブース外観はここ
・ケンウッドはTL-933というHF〜50MHz帯のリニアアンプを出品。これはJRCのJRL-3000FのOEM供給で、昨年もひっそりと出品していたものですが、つい数日前に発売を開始した由(画像はこれ。右隣はHF〜1200MHz帯をフルカバーするTS-2000。ちなみに会場で配布されていたカタログはこれ)。デバイスに2SK410×16本を使用。サイズは233W×444H×450Dmm、重量は25kgとPC/AT互換機を少し大きくした程度のサイズ(縦置き、横置き可。コントロールパネルの着脱可能)ですが、AC200V時は全モードで連続1,000Wの運用ができる性能を有しているそうです。ケンウッドのリグに準拠したインターフェイスを搭載しているため、価格は568,000円と、JRCよりも１万円高に設定されています。
・また先日発表された、144/430MHz帯ハンディ機(SSBやWFMも聞こえる広帯域受信機能付き)、TH-F7もお目見えして来場者の注目を集めていました。…しかしケンウッドブースの最大の注目点は、受付にＦＢなコンパニオンを配置したことかも!?
★日本無線今回のブース外観はここ
・今年はブースも非常に小さく、特に参考出品はありませんでしたが、一昨年から参考出品が続いていたJRL-3000Fが晴れて「新製品」として鎮座していました、hi。
★アルインコ今回のブース外観はここ
・最近、デジタル通信対応のＦＭ機を相次いで発表しているアルインコですが、ブースではデジタル通信ユニットも搭載できる144/430MHz帯の2バンドハンディ機、DJ-596J(キーボード付き)とDJ-593J(キーボードなし)が出品されていました(画像はここ)。価格はDJ-596Jが39,800円、DJ-593Jもほぼ同価格。発売はどちらも９月末頃の予定とのことでした。
ただしデジタル通信の免許については相変わらず「本省決裁」だそうです。またJAIAによるデジタル通信の統一規格(D-STAR)とは根本的に違う物なので、他社からD-STARのデジタル無線機が出ても通信に互換性はなく、D-STAR対応のデジタル通信ユニットを作ることも難しいとの説明を受けました(ついでに言うと、２ｍを受信改造してみても警察無線は聞こえませんゾ)。かつて業界を二分した「AQS」と「DCL」のような騒ぎにならなければいいのですが…。
★その他のメーカー
・エーオーアールが「電波監視業務用受信機」と銘打ったSR1030を参考出品していました。外観は同社の受信機AR8600とそっくりですが、中身は某電波監視関連官庁からの発注を受けて製作した製品と同等の“プロスペック”が詰まっているそうです。受信可能周波数範囲(3GHzまで)、感度、安定度など、どれをとってもトップレベルとのこと。発売は来春、価格は未定ですが「30万円から40万円、あるいはそれ以上の値段になってもおかしくない」ということでかなりの高額になりそう。でも「デジタル通信は聞こえないからネ」と担当者は付け加えるのを忘れませんでした、hi。
・第一電波工業はFT-817に合わせた、7/14/21/28/50MHz帯をカバーするロッド式短縮アンテナ、RHM5を発表。同社のＨＦマルチバンドモービルホイップによく似た外観で、コイルの横に配置されたショートエレメントの操作でバンドを選択し、ロッドエレメントを伸縮させることで同調周波数を微調整する仕組み。最大全長は1550mm(分割時600mm)でラジアル線も付属。FT-817の背面コネクタにも接続可能な構造です。価格は19,800円を予定しています。
★制作者の雑感
・午前中は雨模様というあいにくの天気の中、2001年のハムフェアが始まりました。今年はメーカーのブースが非常に小さい印象です(コメットやサガ電子、クリエートデザイン、北辰産業、ワカマツ製作所、東京ハイパワーなど出展を見合わせたメーカーも多い)。
また来場者も例年の初日以上に少ない感じがします。各社の配布するカタログも点数が少な目。しかも紙袋等の配布もほとんどありません。以前はどのブースでもやっていた「ゲーム大会」のようなイベントも行われていませんでした。JAIAコーナーには各社のノベルティグッズを有料で頒布するコーナーが出現。お金を出して売る時代になったんですネー(といいつつ、値段は結構格安で、Tシャツとかケータイストラップとかをついつい買ってしまったりするのですが…)。
・今年、各社のブースで展示されているリグには、アンテナがつながっていません(一部例外を除く)。というのも、昨年までは展示するリグのために、共同利用の受信用アンテナを会場外に設置することができたのですが、今年はパシフィコ横浜側から設置の許可が下りなかったらしいのです(記念局のアンテナタワーも、よく見るとギリギリ会場外に苦心して建設されています)。この点でもパシフィコ横浜は使いにくくなってしまった、という話を関係者から聞きました。
・今年の「自作品コンテスト」ですが、昨年はTS-520シリーズのミニチュアモデル、一昨年スカ６のミニチュアモデルの無線機を出品して“似てるで賞”を取った、JK1BMK・青木さんが、今年は9R59+TX88のセパレート機でエントリーし、またまた“似てるで賞”を受賞。これは一見の価値ありの出来栄えでした!!(Aug.31-2001)
・２日目のリポートは初日のものの部分的な手直し/追加程度になってしまいました。各クラブブースで販売しているジャンクや中古無線機の話題を、と思っていたのですけど、正直あまりめぼしいものがありません。フェアで会った事情通の某氏はその理由として「１エリアで連続20年以上もハムフェアを開催しているので、各局が持っていた昔の無線機はほとんど放出されてしまった」という点と「インターネットのオークションの発達で、全国の人を相手にいつでも中古リグが売れる環境ができたこと」の２つを挙げていました。
「ネットオークションなら、価格は希望者の数に応じてどんどん釣り上がっていくけど、ハムフェアの場合は出展した価格から“値引き”を要求されるため、結果的にかなり安い価格でしか売却できない。この差が大きいことに気付いた人が多くなったのでは？ お宝的な中古無線機がハムフェアで流通したのはもう昔の話なのかもしれないね」と語っていましたが、さて…。(Sep.01-2001)
・ハムフェア最終日は快晴に恵まれました。各クラブブースはめぼしいジャンク類を探す人たちで熱気に包まれていました。中にはこんな変わった売り物も…(置き場所があれば欲しかったゾ!?)。お目当ての中古無線機類でコレと思う物はあまりありませんでしたが、丹念に探すと珍しい物もあったようです。
・JARLが発表したところによると、初日(８月31日)の入場者は11,000名。これは昨年の13,500名をさらに2,500名ほど下回りました。また２日目(9月1日)の入場者数は15,000名、最終日(9月2日)は9,000名と、それぞれ昨年(2日目16,000人、3日目9,500人)を下回っています。ちなみに、これまで開催されたハムフェアの入場者数を比較してみましょう。
第１回 1977年 9月23〜25日 晴海 26,000名 国際貿易センター南館で開催
第２回 1978年10月27〜29日 晴海 24,000名 同・西館で開催
第３回 1979年 8月17〜19日 晴海 28,000名 この年以降は同・新館で開催
第４回 1980年 8月22〜24日 晴海 34,000名
第５回 1981年 8月21〜23日 晴海 32,000名
第６回 1982年 8月20〜22日 晴海 36,000名
第７回 1983年 8月19〜21日 晴海 38,000名 この年からJAIAフェア同時開催に
第８回 1984年 8月24〜26日 晴海 48,000名
第９回 1985年 8月23〜25日 晴海 50,000名
第10回 1986年 8月22〜24日 晴海 ？名 (手元にデータがありませんでした)
第11回 1987年 8月21〜23日 晴海 54,000名
第12回 1988年 8月26〜28日 晴海 57,000名
第13回 1989年 8月25〜27日 晴海 58,000名
第14回 1990年 8月24〜26日 晴海 59,000名
第15回 1991年 8月23〜25日 晴海 60,000名
第16回 1992年 8月21〜23日 晴海 60,000名
第17回 1993年 8月20〜22日 晴海 61,000名 ←この年が入場者のピークでした
第18回 1994年 8月19〜21日 晴海 51,000名
第19回 1995年 8月25〜27日 晴海 53,000名
第20回 1996年 8月23〜25日 有明 55,000名 ここから東京ビッグサイト西ホールで開催
第21回 1997年 8月22〜24日 有明 51,500名
第22回 1998年 8月21〜23日 有明 45,000名
第23回 1999年 8月20〜22日 横浜 42,000名 ここからパシフィコ横浜で開催
第24回 2000年 8月18〜20日 横浜 39,000名
第25回 2001年 8月31〜9月2日 横浜 35,000名 同時開催だったJAIAフェア消滅(JAIA展示コーナーとなる)
−−東京(晴海)と横浜という開催地の違いを無視して考察すると「３日間の入場者が合計35,000名」というのは、ほぼ20年前の数字と同じになってしまったといえそうです。
来年は、東京・有明の「東京ビッグサイト」に戻り、会期も８月24日(土)、25日(日)の２日間に短縮して開催することがJARLから公式に発表されました。会場のスペースもかなり縮小される模様です。果たしてどれだけの入場者を集めることでしょうか…。
・ここまで、私のつたないハムフェアのリポートにおつき合いいただき、ありがとうございました。次回も余裕があればリポートするつもりです。ではまた来年、「東京ビッグサイト」でお会いしましょう!!(Sep.04-2001)
【禁無断転載 (c)2001 hamlife】
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